秋の夕暮れ 次第に冬の寒さを感じ始める時期であろう

赤一色のグリフィンドール寮に一際目立つ黄色の裏地のコートを着た少女が女子寮に繋がる階段を下りていく

ハッフルパフ 2年生 マギア・ドクダラ
ハッフルパフの中でも優秀な成績を持つも、何かしらの問題行為を見られては同級生やら先生によく咎められてる

「なんだ、グリフィンドール寮にお前が居るとはな、エドやダーナとは一緒じゃなかったのか?」

そう話しかけたのは机に肘をつき椅子に座りながら青髪に眼鏡をかけた少年
手には『Mother Goose's Tales』とタイトルが書かれた古びた本を捲りながら彼女の方を見る

「あら、何時も2人と一緒に居るわけじゃないわ。ちょっとアマカスに用事があって寮に寄ったのよ」
「そう言うニックも、今日はケイネス先生やミミちゃんに悪戯でも仕掛けに行かないのかしら?」

グリフィンドール 2年生 ニック・ハイド
グリフィンドールでも有数のトラブルメーカーの1人で 相部屋のライオットと共に生徒や教職員にちょっかいを掛けることもしばしば

「馬鹿言え、アイツらと絡むとき以外は本を読んで珈琲でも飲んで大人しくしている模範生だぞ」
「それにあの部屋は本を読むのには騒がしすぎるからな。ここでゆっくり時間を過ごすのも悪くない」

大人びてるわねと呟き、彼から正面の椅子を引き座る

「でもそういう割には何時もおんなじ本を読んでるわね それマザー・グースでしょう?」

「御名答だ マザー・グースはいいぞ 何時読んでも様々な想像力を掻き立てられる」

珈琲をズズっと啜り、マザー・グースについて熱く語りだすニック

「そういえばカボチャに関連したお話もあったわね……なんだったかしら カボチャの……」

「『カボチャ好きのピーター』か? なんならもう一度聞かせてやろう」

そういってニックはページをペラペラと捲り、高らかに詩を歌い上げる

‘ピーター ピーター カボチャが大好き,

‘奥さんはいるけど 家が無い,

‘かぼちゃの殻を くり抜いて,

‘その中に奥さんを住まわせたとさ,

「ふふ とてもいい歌ね カボチャのお蔭で仲睦まじく暮らせたのだもの めでたしめでたしだわ」

「めでたし……か。 確かにピーターから見れば幸せなのだろう」
「だが 彼の妻は 本当に幸せだったのだろうか?」
「カボチャという狭い空間に閉じ込められた彼女が本当に幸福だったのか?」

「幸福に決まってるわ 愛し合い結婚した2人なら何があっても幸福よ」

頑なに言い張るマギアに対して 溜息をもらし眼鏡をあげるニック

「まあお前がそういう解釈で良いならそれでいいだろう」
「なんせこの話はマザー・グースの中でも難解な話で様々な解釈に別れるのも事実だ」

「そう、それならいいわ。ありがとうニック また機会があったら他のお話も聞かせてね」

そう言って彼女は席を立ち、グリフィンドール寮を後にする

「…物言わぬ都合の良い『人形』」
「それが本当に当人にとって幸せなのかどうなのか……いや それを思考する能力すら奪われたのか」

「結局 そう判断するのは 己しかいないのだな」

‘もしこの本に出会わなければ,‘義父と従姉妹から愛されてなければ,‘あの女が今も生きていれば,

「全く だから嫌いなのだ この話は」

テーブルに置いてあった珈琲を飲み干し、彼は再び本の世界へ没頭する

願わくば 彼女が己の本心で幸福を叫ぶことが出来ますように………

このページへのコメント

投稿お疲れ様です
誰がなんと言おうと、私は幸せだったと思うの そうでなければ、奥さんはピーターに怒って出て行くんでしょうし……

0
Posted by カボチャキチ 2017年11月07日(火) 07:21:51 返信

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます